ピルの副作用で起きる頭痛 もしかしたら危険信号かも!
2016.4.5

避妊薬として、また女性特有の病気の治療薬として、低用量ピルは女性の強い味方です。
しかし、その薬の性質から、どうしても副作用が起きやすいもの。
中でも代表的な症状が頭痛ですが、頭痛の質によっては、重大な副作用の可能性もあります。
どんなものか見ていきましょう。
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低用量ピルの副作用で頭痛が起きるのは何故?
日本でも、最近はピルの使用が一般的なものになってきました。避妊薬としての効果も勿論ありますが、女性ならではの病気の治療のため服用する人が増えたこともその一因です。
ピルは、含まれる女性ホルモンの量によって高用量、中用量、低用量と分けられますが、現在、一般的にピルというと、低用量ピルを指します。生理不順、月経前症候群や子宮内膜症の治療にも、ほとんどの場合この低用量ピルが用いられています。
ピルは言わばホルモン剤です。低用量ピルは、含まれている女性ホルモンの量が少ないことから、高/中用量ピルよりも副作用が少ないものとされていますが、副作用が全くないわけではありません。
ホルモンは、人の生命活動には必要不可欠なものです。その効力は凄まじく強いもので、中でも特に女性ホルモンは、たった一滴でプールの水を変質させるほどの力を持っています。しかも、一生のうちに分泌される女性ホルモンの量は、ティースプーン一杯、わずか5ccほどでしかありません。
ですから、例え低用量であっても、外部からホルモンを取り入れることで、体内のホルモン環境が崩れ、頭痛などの副作用が現れてもおかしくはないのです。
頭痛や吐き気は低用量ピルの副作用の”代表”
ピルに含まれている女性ホルモンは2つ、卵胞ホルモンと黄体ホルモンです。これらは本来、女性の体を妊娠に適したものにする作用があり、月経期、卵胞期、排卵期、黄体期に合わせ、それぞれの分泌が制御されています。
ピルは、卵巣が排卵しないよう、そして子宮内膜が厚くならないよう、体の中を”擬似妊娠”の状態にするため、体内のホルモンバランスを変化させます。
しかし、ほんの少量、髪の毛の先ほどホルモンの量でも、女性ホルモンに対する女性の体の変化は劇的なので、その変化に体がついていかず、副作用が出てしまうのです。
低用量ピルの主な副作用として挙げられるのは、
- 軽い頭痛
- 吐き気
- 乳房の張り、不快感
- 不正出血
です。
体がピルに慣れ、副作用が収まるまで、1〜2ヶ月ほどの期間がかかります。特に、ピルを服用する人の多くが受ける軽い頭痛や吐き気に関しては、比較的早く治まると言われています。
もし、2ヶ月以上過ぎてもこれらが治まらない時は、そのピルが体に合っていない可能性があります。薬の変更を主治医と相談しましょう。
低用量ピルで起こり得る危険な副作用とは?
ピルが有効な薬であることには変わりありませんが、まれに危険な副作用を起こす可能性も秘めています。
それが”血栓症”(深部静脈血栓症)です。
血栓症とは、血管内に血の塊が生じ、それが血管内に詰まってしまう疾患です。時に、血管内に生じた血の塊が剥がれ、肺や心臓、脳の血管まで移動し、そこで詰まってしまうことがあります。誰もが耳にしたことがある、脳梗塞や肺塞栓症、飛行機など、長時間座っていた時に起きるエコノミー症候群も、この一例です。
血栓症は、血管が傷つきやすい糖尿病や、高脂血症(ドロドロ血)の合併症として起きやすいのですが、ピルを服用することでもリスクが高まります。その理由は、ピルに含まれている卵胞ホルモンが原因です。
卵胞ホルモンはいくつもの働きを担っています。卵巣内の卵胞を成熟させる、自律神経を整える、子宮内膜を厚くし妊娠しやすい体にするといった作用がありますが、同時に”血が固まりやすくなる”作用があるのです。
つまり、ピルを服用することで体内の卵胞ホルモン量が増えてしまうため、通常よりも血栓が出来やすい体になってしまうのです。
血栓症を発症するリスクは、ピルを飲まない場合に比べ、3〜5倍ほどに上がる、という報告もあります。
ピル服用時の激しい頭痛は危険信号!
低用量ピルは、中/高用量ピルに比べ、卵胞ホルモンの含有量が低いため、血栓に関するリスクは他よりも低いものです。しかし、低用量ピルの副作用により生じた血栓症での死亡例・重症例は、海外のみならず日本国内でも報告されています。決して対岸の火事ではありません。
血栓症の症状には3つの段階がある、とされています。
- 足の静脈の血流が悪くなり、血管内に血栓が生じる
- 血栓が静脈に詰まり、血流を止める
- 血栓が血流によって流され、肺や心臓、脳といった別の器官の血管を詰まらせる
3段階目まで進んでしまうと、詰まった場所によっては命の危険もあるため、早いうちに症状に気付き、医師による治療を受けなければなりません。
血栓症の初期症状は、以下の様なものです
- 足(ふくらはぎ)のむくみや腫れ、疼痛
- 激しい頭痛
- 胸の痛み
- 視界がチカチカとして見えづらい
- 血圧の急激な上昇
このような症状が現れたら、すぐにピルの服用を中止して、内科・循環器科のある病院を受診しましょう。時に救急対応が必要なこともありますから、救急対応が可能な病院にかかることも視野にいれましょう。
ピルを服用ができない場合もあるため、医師の処方の上で服用を!
ピルは女性なら誰でも服用できる、というわけではありません。
上記の血栓症などの血管・心臓系の疾患や、その他に起こりうる副作用(肝臓の病気、子宮の病気など)が起きやすくなるため、服用が禁忌とされている人がいます。
いくつか例を挙げると
- 思春期前、または40歳以上
- 35歳以上で1日に15本以上の煙草を吸う
- 肥満
- 偏頭痛もち
- 肝臓に障害がある
上記のような人は、ピルの服用が禁忌とされています。
日本では、現在低用量ピルを入手するには、病院(産婦人科)や薬剤師のいる薬局での処方が基本となります。
ただ、保険の適用が可能な症状は限定されており、ほとんどの場合実費での購入になります。何より、産婦人科という場所は、若い女性にとっては敷居が高い場所。そのため、比較的安価な通販での購入を考えている人もいるでしょう。
しかし、血栓症やその他の病気のリスクの説明、そして自分が服薬禁忌でないかどうかの判断等、正しい知識を得るためにも、専門医の判断の上で処方してもらうことが、何よりも大切です。
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